目次

産業医の仕事内容

医師の転職先を病院やクリニックなどの医療機関に限定する必要もないでしょう。
企業で働くという選択肢もあり、それは製薬メーカーなどではなく一般企業も選択肢に入ってくるはずです。

産業医と呼ばれる職種があります。企業、特に工場などの事業場で多くの従業員が働くところでは、この産業医の設置が義務付けられ、具体的な業務内容に関しては後述しますが、労働者たちの健康や安全を守る業務を任されることになります。
診断、相談、危険予測、教育、指導などの業務を担うと考えると、比較的理解が進むのではないでしょうか。

医師であれば誰でも産業医として働くことができるわけではありません。
特定の産業医基礎研修を履修することや、労働衛生コンサルタント試験に合格することなどが産業医となれる要件となっており、それをクリアしなければ企業に採用されることも叶わないのです。
産業医に興味を持った段階で、こうした研修の履修や資格取得を目指すべきでしょう。

ちなみにですが、労働者が50人以上いる事業場では産業医の選任(嘱託可)が義務付けられており、1,000人以上の場合には専属の産業医の設置が必須となっています。
有害業務を含む特定業務を行う事業場では、労働者500人以上で専属の産業医が必要となります。

①職場巡視

労働者の安全や健康が保たれる環境になっているか、これをチェックするために産業医は職場巡視を行わなければなりません。
整理整頓されているかの確認とともに、清潔さが保たれているかのチェックも行います。
温度や湿度、換気に関する確認も行われ、衛生面の懸念が生じやすいトイレや休憩室などの確認も行う必要があります。

この職場巡視は月に1度を原則として実施しなければならず、労働者の安全や健康が害されることがないよう、未然の防止策として重要な業務となっています。

②健康教育・労働衛生教育

産業医が現場の確認をしただけでは、労働者の安全や健康を守ることができません。
労働者自身も意識を高めることが必要です。
そのために行われるのが、健康や労働衛生に関する教育です。

医師の経験や観点から、健康についての教育を定期的に行い、労働者の意識向上や改善を目的として行われます。
特に特定業務を行う事業場では有害物質を取り扱っているケースも多く、また、生活習慣病などに関する教育及び指導も合わせて徹底することで、健康寿命を延ばすことに繋がる取り組みも行われています。

近年では体だけではなく心に関する健康教育も取り入れられ、心身ともに健康を目指そうとする企業が増えてきています。

③衛生委員会への参加

労働者が50人以上いる事業場では、衛生委員会の設置が義務付けられています。
これは衛生についての対策等に関して調査及び審議を行い、必要に応じて事業者に意見できる場のことですが、産業医はこの衛生委員会のメンバーとして参加しなければなりません。

その事業場で働く労働者の健康は守られているか、そのための対策は十分であるかなどを審議し、問題があればそれの改善策なども取りまとめます。
事業の統括管理者や衛生管理者、労働者の代表などを交え審議を行い、不測の事態が起きないよう衛生管理体制を作り上げる役割を担うことになります。

④健康診断結果の確認

労働者の受ける健康診断を適切に実施し、その結果に基づいて改善の必要性を指摘することや、健康上の問題が見つかればその労働者に対して適切な指導等を行い、企業に対して必要な措置を取らせることも産業医の重要な役割となります。

特定の病気等が見つからなかったとしても、芳しくない数値などが出れば、どのように改善していくべきかのアドバイスも行わなければなりません。
健康診断後の結果のチェックと改善指示、アドバイスや意見書提出なども含め、産業医の重要な仕事となるのです。

⑤健康相談

健康診断時にかかわらず、労働者からの健康相談を受けるのも産業医としての仕事の一つです。

体の調子が悪いといった訴えのみならず、精神的な不調の相談も受けることがあるでしょう。
近年では特にその傾向が強まっているため、産業医はメンタルヘルスに関する知識を有していることも求められます。
相談を受け、その原因を探り、それぞれに対処・改善・指導などを行い、労働者の衛生状態が良くなるよう努めなければなりません。

産業医の求人数は少ない

産業医という職種が存在している以上、それを求める事業者や企業も存在していることになります。
事実、労働者が一定数を超える事業場を有する企業は産業医を選任しなければならないと法律で定められているため、この職種の存在自体がなくなることはありません。

ただ、求人数は非常に少ないことも事実です。
産業医は専属と嘱託がいますが、後者の医師は本業に就いているケースが多いため、よほどのことがない限り空きが出ることもありません。
専属も病院等に勤める医師と比べ労働環境も待遇も比較的良いため、多くの医師が求人が出るのを常に待ち構えている状況です。
求人数が少ない上に、それが出た段階で即座に充足してしまう点を見れば、競争率は他の職種と比較しても非常に高いと言えます。

また、妥協の応募に関しても注意すべきでしょう。転職を急ぐあまり妥協し応募するケースが目立ちます。
気持ちは理解できるものの、重要な役割を担うことを認識し、求人内容や業務内容ともに慎重に精査した上で応募に踏み切るべきです。